「あの人、なんであんなに話がわかりやすいんだろう」
そう感じたことは誰にでもあると思います。逆に、自分が同じことを話そうとすると、うまく言葉が出てこない。伝えた後になって「あぁ、あんな言い方をすればよかった」と後悔することもあるかもしれません。
そのたびに、「自分は頭の回転が遅いのかもしれない」と落ち込んでしまう。でも、それは思い込みです。
今回は、伝えるのが苦手に感じてしまう理由と、身近な「話がうまい人」から自然にコツを盗んでいく方法についてお話しします。
「伝えるのが下手=頭が悪い」ではない理由
「頭の回転が早い人」や「知識が豊富な人」であっても、いざ自分の考えを言葉にしたり、人に何かを伝えたりする場面では、うまく話せずにつまずくことがあります。
反対に、難しい専門知識がなくても、相手の心にスッと届く話し方をする人も少なくありません。
この違いは、知識や能力の差ではありません。
自分の頭の中にある考えを整理し、相手に伝わる形へ組み立てる方法を知っているかどうか。 その違いです。
伝えるのが苦手なのは、頭の中にあるアイデアや知識が足りないからではありません。
「何から話すか」「どんな順番で伝えるか」を整理する方法を、まだ身につけていないだけです。
その考え方が少しずつ身についてくると、今持っている知識や経験だけでも、以前より伝わる話ができるようになります。

上手な人と話していても、なぜ「自然と上手く」ならないのか?
身の回りに「この人、すごく伝えるのが上手だな」と感じる人がいると、「そんな人と日常的に話していれば、自分も自然とうまくなるのでは?」と思うことがあります。
ですが、残念ながらただ一緒にいるだけでは、伝え方はあまり身につきません。
理由はシンプルです。
話がわかりやすい人の話を聞いていると、私たちは「なるほど、わかりやすいな」と感じたところで満足してしまいます。
でも、一歩立ち止まって考えてみてください。
- なぜ、この順番で話したのだろう?
- どこで結論を伝えたのだろう?
- なぜ、この例えを選んだのだろう?
こうした「伝え方の設計」までは、意識せずに聞き流してしまうことが少なくありません。
つまり、話の内容は聞いていても、「どう組み立てているか」は見ていないのです。
知らないうちに、相手の言語化能力の高さに助けられながら話を聞いている状態になっています。

上手な人の「脳内」を盗むための3つの視点
では、周りにいる「話がわかりやすい人」から学び、自分の言語化力を伸ばすには、どこを見ればいいのでしょうか?
①「なぜ今の説明でスッと理解できたのか」を分解してみる
上手な人と話していて「あ、今の説明すごく分かりやすかったな」と感じたら、そのまま聞き流さずに、一歩立ち止まってみます。
最初に何を言っていた?
どこで結論が来た?
どんな順番で情報が並んでいた?
なぜ、その順番だったのだろう?
たとえば、遅刻の連絡ひとつでも、伝わり方は大きく変わります。
わかりやすい例
「今日は電車遅延で10分遅れます。次の駅で状況を確認して、また連絡します。」
わかりにくい例
「電車が止まっていて、駅員さんに聞いたんですが、まだよく分からなくて…。とりあえず待っているんですけど、多分遅れると思います。」
わかりやすい例は「結論(10分遅れる)→次の行動(また連絡する)」の順で来ています。
わかりにくい例は、状況説明が先に長く続き、一番知りたい結論が最後まで出てきません。
買い物を頼むときも同じです。
わかりやすい例
「牛乳を1本買ってきて。あと、もし特売してたら卵もお願い。」
わかりにくい例
「そういえば牛乳が少なくなってきてて、卵とかもあったほうがいいかも。まあなくてもいいんだけど、牛乳は欲しいかも。」
わかりやすい例は「必ず必要なもの(牛乳)」と「余裕があれば(卵)」がはっきり分かれています。わかりにくい例は、どれが本当に必要なのか、優先順位が最後まで見えてきません。
こうして一つひとつ分解して考える習慣が、「なんとなく分かりやすい」を、自分でも再現できる言語化力へ変えていきます。
②「なぜその言葉を選んだのかを見る」
同じ内容でも、選ぶ言葉によって伝わり方はまったく変わります。
上手な人の話を聞くときは、「何を言ったか」だけでなく「なぜその言葉を選んだのか」まで見てみます。
たとえば、企画が通らなかったことを伝えるとき。
「予算オーバーなので却下です。」 「コスト面で厳しくて、今回は見送りになりました。」
内容はほぼ同じですが、「却下」ではなく「見送り」という言葉を選ぶことで、「今回は難しかった」という印象になり、相手も受け止めやすくなります。
上手な人は、事実だけでなく、相手がどう受け取るかまで考えて言葉を選んでいることが少なくありません。
言葉選びの理由まで考えるようになると、相手の「考え方」そのものが少しずつ見えてきます。
③「自分ならどう話すか置き換えてみる」
観察するだけで終わらせず、聞いた内容をその場で自分の言葉に置き換えてみます。
頭の中で一度「自分だったらこう言う」と組み立て直す練習です。
たとえば、同僚がこんな報告をしていたとします。
「明日の会議、資料はA案でいきます。理由は、コストが一番低くて、社長も前回A案を評価していたからです。」
これを聞いたら、そのまま流さずに、自分が同じ内容を誰かに伝えるとしたらどう言うか、頭の中で言い直してみます。
自分ならこう言うかな
「明日はA案で進めます。コストが一番安く、社長の評価も高かったからです。」
生活の場面でも同じことができます。友人が旅行先をすすめてくれるとき。
「今度行くなら春がいいよ。桜も見られるし、まだ観光客も少ないから。」
自分ならこう言うかな
「行くなら春がおすすめ。桜が見られて、混雑も少ないから。」
一言一句同じである必要はありません。
結論を先に、理由を後に、という型を自分の言葉で再現できたかどうかがポイントです。
大切なのは、「どう組み立てれば伝わりやすいのか」という型を、自分の言葉で再現してみることです。
これを繰り返していくと、話が上手な人の「言葉」を覚えるのではなく、「考え方」を少しずつ自分の中へ取り入れられるようになります。
まとめ

ここまでの内容を、簡単に振り返っておきます。
・伝えるのが苦手なのは、頭の良し悪しではなく、考えを整理して相手に伝える方法をまだ知らないだけ
・話がわかりやすい人と一緒にいるだけでは、「受信」しているだけで終わってしまう
・「なぜ分かりやすいのか」を分解する、言葉選びに目を向ける、自分の言葉に置き換えてみる。この3つの視点を持つ
伝える力は、後から身につけられる「技術」です。
「自分はうまく話せないから……」と諦める前に、まずは、話し方ではなく「考え方」を見るつもりで観察することから始めてみませんか?
次回は、その「観察する目」をさらに育てるための問いをご紹介します。
「なんとなく」を少しずつ言葉にする7つの質問を通して、言葉の解像度を高めていきましょう。
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