「考えてばかりで、動けない」
そんな日、ありますよね。
前回の記事『“なんとなく”を味方にする』では、“動けない理由”を行動経済学から見ました。
今回はその続きを――“考えたあと、どう動くか”。
アイディアも感情も、書き出すことで初めて動き出します。
メモは、思考を止めない小さな魔法です。
行動経済学で見る「書く」の意味
人は“始める前”がいちばん重い。これは「現状維持バイアス」と呼ばれる心理です。
今のままでいたほうが安全だと感じるので、
・新しいことを始める
・違う選択をする
といった行動のハードルが、ぐっと高くなります。
そこで役に立つのが「メモ」。
メモは、
「考える」だけで止まっている状態から、「行動」に一歩進めるためのトリガー です。
頭の中でぐるぐるしているだけの考えを、一度ノートやアプリに「外に出してあげる」。
それだけで、「なにからやるか」が見えやすくなります。
「あと1ピース」の感覚が、続きを動かしてくれる

ここで出てくるのが、パズルのイラストにもある「あと1ピースだけ足りない」 感覚です。
途中まで組み立てたパズルを見ると、「完成させたい」と思いますよね。人は、途中で止まっているものを見ると、続きを埋めたくなる心理 を持っています。
メモも同じで
- 中途半端に終わったメモ
- やることだけ先に書いてあるページ
- 「ここから書く」と余白を空けておいたノート
こうした“途中の状態”が、小さな「続きスイッチ」になります。
「書くこと」が、作業途中の続きを取り戻し、止まりかけた思考をもう一度流し始めてくれる。
この「続きが気になる力」を味方につけると、次の一歩が少し軽くなります。
書くことで“決断疲れ”が減る
一日の終わりにどっと疲れる理由のひとつは、「決めること」が多すぎるから だと言われています。
これを「決断疲れ」と呼びます。
書くことは、この決断疲れをやわらげてくれる作業でもあります。
- 頭の中を整理して、ワーキングメモリ(脳の作業スペース)を節約できる
- 「考える・決める・覚えておく」を、メモと脳で分業できる
- メモに一度“仮置き”することで、「今はここだけやればいい」と集中しやすくなる
つまり、「書く=考える余白をつくること」でもあるんですよね。
「全部ちゃんと覚えておかなきゃ」と思うほど、脳はすぐパンパンになります。
メモにすこしずつ預けていくことで、決めるエネルギーを大事なところに残しておけます。
実践例

ここからは、私が実際にやっている「思考を動かすメモ」の使い方です。
● 正確に書こうとしない。まず1行だけ書く
「きれいにまとめよう」「正しく言葉にしよう」と思うと、
それだけでペンが止まってしまいます。
最初の1行は、「とりあえず今思っていること」 でOK。あとで直す前提で、ざっくり書き出してしまいます。
● 「動くためのメモ」と「残すためのメモ」を分ける
- 今日やること・すぐ動きたいこと → 動くためのメモ
- 気づき・学び・あとで読み返したいこと → 残すためのメモ
この2つを同じページに詰め込むと、「見るたびに情報量が多くて疲れる」状態になりがちです。
メモの役割を分けると、「開いたときに迷わない」メモ になります。
● 家事やサイト運営でも、迷いを減らすために書く
- 今日はここだけ掃除する
- この記事では、ここまで仕上げる
- このタスクは「調べる」まででOK など
行動を細かく分けてメモしておくと、そのときの体調や気分に合わせて「どの一歩なら動けそうか」を選びやすくなります。
私にとって、“メモを開く=行動を始めるスイッチ”になっている感覚があります。
まとめ
書くことは、思考を止めないための小さな魔法。
行動経済学的に見ても、「書く」という行動は
- 現状維持バイアスで止まりそうになる心を、そっと前に進める
- 「あと1ピース」の感覚で、続きに戻る力をくれる
- 決断疲れを減らし、集中を取り戻す手助けをしてくれる
そんな役割を持っています。
スティーブ・チャンドラーの『自分を変える89の方法』には、
「やりたくない気持ちでいっぱいになるのは、
いつも“手早く、効率的に片づけなきゃ”と思ってしまうからだ」
といった内容の言葉があります。
メモも行動も、“完璧に、すばやく”ではなく、少しずつでいい。
小さな一行が、思考を止めないための最初のピースになります。
「考えてばかりで、動けないな」と感じた日は、
まず一言だけでも書いてみる。
そこから、次の一歩が静かに動き出していきます。










